事代主神社(阿波郡)

要旨

阿波郡市場町に鎮座する、全国に二社しかない式内「事代主神社」の一つ。阿波説では、阿波郡の事代主神社を全国の事代主祭祀の本源(元宮)とし、伊豆三嶋大社(伊豆国一宮)や奈良・率川阿波神社(大神神社摂社)など、全国各地への遷座・分祀の起点として位置づける。事代主神は国譲り神話の中核神であり、初代神武〜第3代安寧天皇の皇統に三代連続で外戚として関わるとされ(媛蹈鞴五十鈴媛・五十鈴依姫・鴨王の娘)、阿波説では「出雲神ではなく阿波神」として葛城・高市・鴨氏の系譜論とも結びつける。本ノートは各論点を独立の専門ノートへ展開するポータルであり、社伝・由緒そのものの記述は他ノートに委ねている。


1. 命題の構造

観点通説阿波説
事代主神社の系譜的位置出雲系の神・事代主を祀る地方の式内社の一つ全国の事代主祭祀の本源(元宮)であり、伊豆・大和など各地への遷座元
伊豆三嶋大社との関係伊豆国一宮として独自に成立阿波→神津島(伊古奈比咩命)→伊豆半島という海路の遷座ルートを想定
奈良・率川阿波神社との関係大神神社摂社として推古元年(593年)創建阿波から大和への陸路の遷座を想定

2. 基本情報

項目内容
社名事代主神社
所在地徳島県阿波市市場町伊月宮ノ本100
創建不詳
主祭神事代主命
配祀不詳
延喜式表記阿波国 阿波郡 事代主神社(小)
社格小社
位置付け全国に二社(阿波郡・勝浦郡生夷神社)のみの式内「事代主神社」の一つ。阿波説では全国事代主祭祀の元宮

6. 阿波説における意義

6-1. 全国遷座先(元宮としての位置づけ)

阿波郡の事代主神社は、全国の事代主祭祀の 本源(元宮) とされる。主な遷座先:

遷座先関連神社経路
伊豆三嶋大社(伊豆国一宮)事代主+大山祇命海路:阿波 → 神津島(伊古奈比咩命) → 伊豆半島
奈良 率川阿波神社(大神神社摂社)事代主+阿波咩命陸路:阿波 → 大和(推古元年593創建)
諸国の事代主・恵比寿系神社事代主神阿波郡(市場町)と勝浦郡(生夷神社)からの分祀

→ 詳細:

6-2. 詳細論考ポータル

以下の各論点は、独立した専門ノートとして詳細化されている。

6-3. 皇統との外戚関係

事代主神は初代神武天皇(皇后:媛蹈鞴五十鈴媛=事代主神の娘)、第2代綏靖天皇(皇后:五十鈴依姫=事代主神の娘)、第3代安寧天皇(皇后:鴨王娘=事代主神の孫娘)に三代連続で外戚として関わる。この皇統連続性は阿波説における皇統論の中核として位置づけられる。

  • 2025-12-23-畝傍山登山と初代から4代の陵を巡る旅 — 初代〜4代の天皇陵を巡る現地踏査
  • 2026-03-03-⑪『この国は、誰の神話か』 阿波から読み直す日本創世 — 阿波説連載・第11回
  • 2026-03-12-⑭『この国は、誰の神話か』 阿波から読み直す日本創世 — 阿波説連載・第14回
  • 2026-04-12-『この国は、誰の神話か』 阿波から読み直す日本創世_(完全版) — 連載完全版(阿波説の体系的総括)

6-4. 葛城・高市・鴨氏との系譜論

事代主神は大和の葛城・高市・鴨の三大氏族の祖神とされる。阿波説ではこれらの氏族の阿波起源論を重視する。

  • 2025-10-08-葛城三大勢力とは? — 葛城の三大勢力(鴨氏・忌部氏・葛城直氏)の整理
  • 2025-10-24-高市氏という古代氏族 — 高市氏の古層構造
  • 2026-04-13-クラウドシステム説と高市社 — 高市社(事代主祭祀)と「クラウドシステム」論
  • 2026-04-28-宇奈提(雲梯)の事代主命(出雲国造神賀詞) — 出雲国造神賀詞の宇奈提雲梯と事代主の関連
  • 徳島県の国造の考察(出典) — 阿波国造・粟国造・長国造の系譜論

6-5. 海人族・阿曇氏との関連

事代主神は海神としての性格も濃く、阿曇氏(瀬戸内海東部沿岸)の祖神信仰とも接続するとされる。

  • 谷川健一『日本の神々』―― 出雲系海人族(阿曇一族か)が阿波郡に祀ったとする推測
  • 志賀剛『式内社の研究』―― 建布都神・事代主神は阿波阿曇氏が祀る海神
  • 善入寺島(旧粟島)―― 阿波咩命祭祀との関連(『粟島史』)

6-6. 伊豆・神津島との接続

延喜式内社「伊豆国 賀茂郡 阿波神社」(神津島・現阿波命神社)の祭神は阿波咩命。事代主神が伊豆諸島を作るために神々を集めたという神津島の伝承と、阿波忌部の東遷ルートが交差するとされる。

  • 神津島・阿波命神社(延喜式内社・名神大)
  • 三嶋大明神(伊豆国一宮・大山祇+事代主)
  • 房総半島(千葉県南部)の安房忌部祭祀

6-7. 国譲り神話の舞台との関係

『日本書紀』神功皇后摂政前紀では、神功皇后への神託で「尾田吾田節の淡郡(あわのこおり)」=阿波国阿波郡にいる神として、建布都神+事代主神(天事代虚事代玉籤入彦嚴之事代神)が並んで登場する。延喜式内社で両神を併祀する唯一の郡であり、阿波説では国譲り神話の舞台を阿波に比定する根拠の一つとする。


7. 関連神社・関連氏族


9. 参照ブログ・Web資料

  • 玄武神社サイト:https://genbu.net/data/awa2/kotosiro_title.htm
  • 2016-10-04-勝占神社は事代主神社_祭神も事代主神_一柱だ!! — 勝浦郡 生夷神社/勝占神社との比較
  • 2009-08-27-式内社 事代主神社 阿波市市場町 — goutara系・現地調査
  • 2009-08-31-式内社(事代主神社) 生夷(いくい)神社 勝浦郡勝浦町 — 勝浦郡論社
  • 2012-10-08-阿波市市場町 事代主神社 — goutara系・追記
  • 2023-11-18_【阿波の神社を行く!】事代主神は出雲神ではなく阿波神だ!「阿波国 阿波郡 事代主神社」(出典) — 主資料

10. 史料

『日本書紀』神功皇后摂政前紀

「尾田吾田節の淡郡にいる神…天事代虚事代玉籤入彦嚴之事代神(事代主神)」

神功皇后への神託で「淡郡(あわのこおり)」=阿波国阿波郡にいる神として、建布都神+事代主神が並んで登場する。延喜式内社で両神を併祀する唯一の郡。

『阿波の古城記』伊月城(岡本監輔「名神序頌」所引)

天正中有伊月権頭重綱居伊月城 安寧帝時 出雲事代主従住當国五十鈴依姫奉斎 子孫相続如中川都守是也

安寧天皇の時代に事代主神が阿波(淡郡)に移り住み、五十鈴依姫が斎奉ったとする。「伊月」の地名は「事代主神を斎(いつき)奉った」ことに由来するとされる。

『粟島史』(大塚唯士)

武布津(たけふつ)の神が出雲を平定して天照大神に奉告するために事代主命を道連れにして阿波に来た。…忌部族天日鷲命は武布津神のために休憩所を今の香美に建て、事代主命を自分の妹の阿波咩の館に迎えた。

阿波咩命と事代主神の館の伝承を伝える。


11. 関連ノート(Vault内)


12. 留保(中立的併記)

注意

本ノートは事代主神社の各論点を独立の専門ノートへ展開するポータルであり、社伝・由緒そのものの独自記述は乏しい。全国遷座先(伊豆三嶋大社・奈良率川阿波神社等)を元宮として位置づける議論は阿波説の枠組みであり、文献上の確定的な裏付けを持つものではない。詳細は各リンク先の専門ノートを参照のこと。

「事代主神=阿波の神」とする解釈は阿波説固有であり、通説では事代主神は出雲系神話の枠組みで語られる。葛城・高市・鴨氏の阿波起源論も阿波説内部で展開される系譜論で、通説(大和盆地土着の氏族)とは並立しない。一次史料『日本書紀』『阿波の古城記』『粟島史』の引用は阿波説論者による解釈であり、史料そのものには別の通説的読み方も存在する。