大御和神社(おおみわじんじゃ)

要旨

大御和神社(おおみわじんじゃ)は、阿波国名方郡の式内社(小社・一座)。徳島市国府町府中に鎮座、阿波国府の所在地 の核心。祭神は 大物主神(オオモノヌシノカミ)。阿波説では 奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社の元宮 とされ、「国璽(こくじ)守護」の阿波国府公的祭祀社として位置づけられる。


1. 命題の構造

観点通説阿波説
社名の由来「大御和」は地域の氏神・国府鎮守の社名「大御和(おおみわ)」=「大神(おおみわ)」と同訓・同音、奈良大神神社との祭祀的同一性を示唆
祭祀の系統大物主神信仰は奈良三輪山を起源とし、各地に勧請された本社が本源で、神武東征に伴い祭祀が大和へ東遷し、奈良の大神神社が成立した
「印鑰」の性格国司による鍵・印章管理の慣行に基づく地方社の称号阿波国府=古代国家の本貫地であったことを示す「国璽守護」の証跡
山頂祭祀との関係個別の山岳信仰として独立に存在中津峰山頂「三十八社(みわ社)」と同一神を祀り、本社はその里宮として機能

2. 基本情報

項目内容
社名大御和神社
所在地徳島県徳島市国府町府中
創建不詳(延喜式神名帳以前)
主祭神大物主神(オオモノヌシノカミ)
配祀天照大神(伯母宮、社伝)
延喜式表記阿波国 名方郡 大御和神社
社格小社・一座
位置付け阿波国府の国家祭祀社(「府中宮」「印鑰」の通称)

3. 祭神と社伝

大物主神(オオモノヌシノカミ)

  • 大国主神の 和魂(にぎみたま) または分身。
  • 一説に 大己貴命の幸魂奇魂(『日本書紀』)として、海上に光って現れ、三輪山に祀ることを請うた神。
  • 蛇神・水神・農耕神の性格を併せ持ち、奈良の三輪山祭祀の主神。

「府中宮」「印鑰(いんやく)」の通称

  • 江戸期『阿波志』:「府中村にあり、即ち大己貴命。今「府中宮」または「印鑰」と称す。「大宝二年(702)に国司が初めて鑰を給う」ことに因む」。
  • 「印鑰」=「印」と「鑰(鍵)」 =阿波国府の 印璽 と 公庫の鍵 を司る祭祀社。
  • これは本社が 阿波国府の国家祭祀社 として、行政・軍事の象徴を守護していたことを示す。

配祀の伯母宮(天照大神祠)

  • 『阿波志』に「側に天照大神祠(土人「伯母宮」と称す)あり」。
  • goutara-blog 2020-07-27「番外:大御和神社(追記:伯母宮の訂正)」は伯母宮比定の訂正を提示。長年の研究蓄積による再考察。

4. 歴史

  • 延喜式神名帳(927年)に「阿波国 名方郡 大御和神社」として記載。
  • 大宝二年(702):国司が阿波国の鑰(鍵)を初めて給わる→「印鑰社」の称号の起源。
  • 国府所在地 としての歴史:徳島市国府町は阿波国府の所在地で、本社はその守護社。
  • 中世以降「府中宮」として継承、近世には国璽信仰の中心。

5. 阿波志(江戸期地誌)

江戸後期の地誌『阿波志』(藤原憲輯)における本社の記載:

式小祀。府中村にあり、即ち大己貴命。今「府中宮」または「印鑰(いんやく)」と称す。「大宝二年(702)に国司が初めて鑰を給う」ことに因む。隣村共祀。側に天照大神祠(土人「伯母宮」と称す)あり。

→ 全文:阿波志 現代語訳(名東郡 8-3 主要祠廟の節)


6. 阿波説における意義

6-1. 奈良 大神神社の元宮論(東遷の法則の双璧)

阿波説の核心命題:「奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社は、阿波国の本社からの東遷祭祀である」。

根拠:

  • 「大御和(おおみわ)」と「大神(おおみわ)」は同訓・同音。
  • 本社の祭神 大物主神は、奈良三輪山の主神。
  • 阿波説では、神武東征に伴い阿波の祭祀が大和へ東遷したとし、本社→大神神社の祭祀継承を主張。
  • 関連ブログ:awa_otoko_09_郡別#2015-02-03-阿波から奈良へ(大御和神社) / 2024-01-16-日本という国の始まり その7

6-2. 中津峰山頂「三十八社(みわ社)」との山頂祭祀

  • 山頂祭祀の本宮:中津峰山頂・三十八社(みわ社) — 「三十八=みわ」読みにより本社主神 大物主神 は中津峰山頂の三十八社(みわ社・天津神社)と同一神とされ、本社は山頂祭祀の里宮(国璽守護拠点)、さらに奈良 大神(おおみわ)神社 への東遷の起点とされる。
  • これは奈良三輪山(山岳信仰)と阿波中津峰山(山岳信仰)の祭祀構造の同型性を示し、東遷の法則を裏付ける。

6-3. 国璽(こくじ)守護論

  • 『阿波志』の「印鑰」称号は、本社が 国家の印璽・国璽の守護祭祀社 であったことを示す。
  • 阿波説では、国家の正統性の象徴である国璽が阿波で祭祀されていた という命題(大御和神社と国璽:阿波国府における国家守護の拠点)と接続する。
  • これは阿波が古代国家の原本貫地であったとする阿波説の中核論を支える。

6-4. 阿波国府の祭祀的中核

  • 徳島市国府町は阿波国府の所在地。本社の周辺には:
    • 一宮神社(八倉比売の里宮)
    • 船盡神社・船盡比賣神社
    • 国府廳趾 → これらが密集し、本社を中核とする 阿波国府の祭祀ネットワーク を構成する。
  • 阿波説では、阿波国府=古代国家の本貫地、と位置づけられる。

6-5. 大物主神=蛇神=三輪山祭祀の阿波起源

  • 大物主神は蛇身の神。奈良三輪山では蛇神祭祀の伝承が継承される。
  • 阿波の中津峰山頂祭祀(三十八社)は 石囲いの聖域 であり、原初的な山岳・蛇神祭祀の形態を残す。
  • → 詳細:大和(おおみわ)祭祀と三輪山の起源

7. 関連神社・関連氏族

  • 天石門別八倉比売神社(名方郡:阿波国府祭祀網の中核)
  • 多祁御奈刀祢神社(名方郡:諏訪元宮論:東遷の法則の双璧)
  • 大神神社(奈良県桜井市:東遷先・分祀先)
  • 中津峰山天津神社(三十八社:山頂祭祀)
  • 国造(粟国造・名方国造)・国司

8. 現地情報

  • 所在地:徳島県徳島市国府町府中
  • アクセス:徳島市中心部から国府町府中
  • 周辺:阿波国府跡、一宮神社、船盡神社、国府廳趾
  • 外部参考:玄武神社サイト https://genbu.net/data/awa2/oomiwa_title.htm

9. 参照ブログ・Web資料

goutara-blog(ぐーたら気延日記)関連考察

  • goutara_01_神社#2012-08-04-あなたの知らない「大御和神社」 (出典) — 大御和神社(府中宮/印鑰社)の知られざる側面に焦点を当てた論考
  • goutara_99_その他#2020-07-27-番外:大御和神社(追記:伯母宮の訂正) (出典) — 「伯母宮(天照大神祠)」比定の訂正。長年の研究蓄積による再考察

参照資料(ブログ・Web自動)

  • 2015-02-03-阿波から奈良へ(大御和神社)
  • 2010-09-03-国府町 大御和神社
  • 2012-08-04-あなたの知らない「大御和神社」
  • 2020-06-17-番外:大御和神社
  • 2020-07-16-番外:大御和神社(追記:伯母宮)
  • 2020-07-27-番外:大御和神社(追記:伯母宮の訂正)

参照資料(ブログ・Web本文マッチ)

  • 2024-01-16-日本という国の始まり その7 (本文中 “大御和神社” ×7)

参照資料(ブログ・Web本文マッチ 拡張)

  • 2017-06-01-ぜんぜん跡形ないぞ⁉︎_阿波國國司廳趾‼︎(とその秘密) (本文中 “大御和神社” ×2)

10. 史料

神社縁起・社伝

  • 『阿波志』(藤原憲輯、江戸後期)

11. 関連ノート(Vault内)


12. 留保(中立的併記)

注意

  • 「大御和」と「大神(おおみわ)」の同訓・同音による東遷論は阿波説的解釈であり、通説の三輪山祭祀起源論とは異なる。
  • 中津峰山頂「三十八社」との同一神論は「三十八=みわ」の読みに依拠する阿波説独自の解釈で、文献的に確立したものではない。
  • 伯母宮(天照大神祠)の比定はgoutara-blogによる再考察を経ており、確定的な史料的裏付けは限定的。
  • 本ノートのevidence_typeは “primary_source_based”、confidence は 4。

※本稿は阿波国の式内社一覧の名方郡所属社として、阿波国府祭祀と大神神社元宮論という観点から位置付けられる。