建嶋女祖命神社

要旨

建嶋女祖命神社(たけしまめおやのみことじんじゃ)は小松島市中田町に鎮座する延喜式内社(阿波国勝浦郡、小社)。「女祖命(めおやのみこと)」 という稀少な祖母神格の式内社で、祭神は 埴安姫命(ハニヤスヒメ/土の女神)。延喜式上は勝浦郡所属だが、現在の行政区画上は小松島市中田町に位置し、勝浦郡と那賀郡の郡境 にあたる。長国造圏の北端/粟国造圏の南東端 という地政学的位置を持ち、阿波説では 長国造の祖母神祭祀 の中核とされる。


祭神と社伝

項目内容
主祭神埴安姫命(ハニヤスヒメ/土の女神)
神名解釈「建嶋女祖(タケシマ・メオヤ)=建嶋(武嶋/長国)の祖母」
神格土・農耕・出産の女神、長国造の祖母神
関連神賀志波比売神社(賀志波比売)と同系統の阿波女神

埴安姫命は『古事記』神代巻でイザナミの大便から生まれた 土の神。本社の社名「建嶋女祖」は、長国(タケシマ/ナガ)の建国神話における祖母 という位置付けを示唆する。

歴史

  • 延喜式神名帳(927年):阿波国勝浦郡「建嶋女祖命神社(小)」一座。
  • 中世:中田の鎮守として崇敬される。
  • 江戸期:『阿波志』に祠廟として記載。
  • 近代:村社、現社地(小松島市中田町)に固定。

阿波説における意義

  1. 長国造の祖母神祭祀:「建嶋(タケシマ)」を 長国 と読み解く阿波説では、本社を 長国造の祖母神祭祀 の核とみなす。事代主(勝占神社)→ 大国主(八桙神社)→ 長国造王統 の系譜に対し、女神側の祖母神 が建嶋女祖命。
  2. 近江「建部大社」への伝播:阿波説(awa-otoko 2014-10-13)では、近江一宮 建部大社(滋賀県大津市)の元宮を本社に求める論があり、「タケシマ=タケベ」 の音転を介して、阿波→近江 の祭祀東伝路を主張する。
  3. 粟・長境界の祖母神:本社の位置(小松島市中田)は粟国造(名方郡)と長国造(那賀郡)の境界域。両国造を統合する祖母神 という位置付けで、阿波の女神祭祀ネットワーク(賀志波比売神社・天石門別八倉比売神社・峯神社)の南阿波結節点となる。
  4. 大宜都比売命系祭祀との接続:埴安姫命は古事記でイザナミの大便から生まれた土の女神。阿波の祖神 大宜都比売命 と同質の 生育・土壌の女神 として位置付けられる。

関連神社・関連氏族

現地情報

  • 所在地:徳島県小松島市中田町豊の本
  • GPS:34.0166832, 134.5800821
  • アクセス:小松島市の中心、JR中田駅近郊
  • 境内:平地鎮座、勝浦川河口部の旧潟湖跡に近接

参照ブログ・Web資料

留保

  • 延喜式表記上の所属は 勝浦郡(本ノートの 地域 もこれに統一)。ただし現社地(小松島市中田町)は 勝浦郡と那賀郡の郡境 にあたり、現行行政区画の歴史的経緯から、郡比定には 論社認定の流動性 がある。二次資料には「那賀郡」と記すものもあるが、延喜式・goutara の校訂はいずれも勝浦郡を採る。
  • 「建嶋=長国」「タケベ=タケシマ音転」「近江建部大社への東伝」は阿波説(awa-otoko)の解釈で、通説では建部大社の祭神(日本武尊)と本社の系統的関係は確認されていない。
  • 埴安姫命比定は genbu.net 等二次資料による。
  • 阿波説(blog_hypothesis)では、本社の土の神(埴安姫命)が 水の神ミヅハノメ(弥都波能売神)と対をなす「土の神」 として、近江へ勧請されたとする論がある(近江への土の女神の東伝は 波爾布神社 の天平13年勧請と同主題)。また、勝浦郡の地名「櫛渕」を、忌部や海人族が「櫛」を携えて進出した痕跡とみる地名解釈もあるが、いずれも社伝に直接の典拠はない。

リンク

外部参考

関連ノート