海神族

要旨

海神族(かいじんぞく) は、綿津見神(ワタツミ)を祖神とする神格群の総称で、これを祭祀した人間集団=海人族と対をなすカテゴリ。中核は綿津見三神・豊玉姫・玉依姫・住吉三神・宗像三女神など。阿波説では海神族の本源的祭祀地を阿波国名方・那賀・板野の海岸線に求め、記紀の海神宮を鳴門〜那賀河口に比定し、山幸彦〜神武天皇に至る皇統の母系五代が阿波海岸線で展開したとする。

概要

  • 読み: カイジンゾク(神格群としての総称)
  • 意味: 綿津見神(ワタツミ)を祖神とする神格群の総称。海人族(人間集団)が祖神祭祀の対象とした 海神側の神格カテゴリ。
  • 中核祭神: 大綿津見神/底津綿津見神・中津綿津見神・上津綿津見神(綿津見三神)/豊玉姫命・玉依姫命/住吉三神/宗像三女神
  • 登場文献: 『古事記』『日本書紀』神代下/『先代旧事本紀』

海神族と海人族の区別

  • 海神族(カイジンゾク):祀られる 神格 の系統(綿津見系の神々)
  • 海人族(アマゾク):祭祀する 人間集団(安曇氏・海部氏・那賀氏・宗像氏 等)
  • 両者は対をなし、海人族は海神族を祖神として祭祀した。

阿波説における位置づけ

阿波説では、海神族の本源的祭祀地を 阿波国名方郡・那賀郡・板野郡の海岸線 に求める。記紀の「海神宮(綿津見神宮)」を阿波の沿岸(鳴門〜那賀河口)に比定し、山幸彦・豊玉姫・玉依姫・鸕鶿草葺不合・神武天皇に至る 皇統の母系五代 がすべて阿波海岸線で展開したとする。

具体的な祭祀拠点:

鳴門海峡(北端)          ── 安曇系・住吉系
吉野川河口(板野・名方)    ── 王子和多都美神社/豊玉姫・玉依姫
那賀川河口(南阿波)       ── 八桙神社・事代主神
海部郡(最南端)           ── 海部氏・宗像系

これらが連続した 阿波海岸線の海神祭祀帯 を構成し、列島最古の海洋祭祀文化が成立したとする。

主要祭神

神名性格主要祭祀地(阿波)
大綿津見神海神の頂点王子和多都美神社
豊玉姫命海神の娘・山幸彦妃天石門別豊玉比賣神社
玉依姫命海神の娘・神武母同上/和多都美関連社
住吉三神航海守護鳴門周辺
宗像三女神海上交通海部郡
事代主神海洋王権の祖神八桙神社(那賀郡)

阿波の祭祀

※ deities または aliases に「綿津見/和多都美/豊玉/玉依」のいずれかを含む式内社(旧国・旧郡順)。

神社旧国旧郡社格主祭神
玉前神社上総国玉依姫命
黒島神社(伊予国新居郡)伊予国新居郡小大綿津見神・大物主神
室津神社土佐国安芸郡小大綿津見神(伝)・室津神
賀茂神社土佐国幡多郡小賀茂別雷神・賀茂建角身命・玉依姫命
賀茂御祖神社山城国愛宕郡名神大賀茂建角身命・玉依姫命
和爾賀波神社讃岐国三木郡小豊玉姫命・鵜葺草葺不合命
雲気神社讃岐国多度郡小豊玉姫命・闇龗神
日吉大社近江国滋賀郡名神大・二十二社・旧官幣大社大己貴神(西本宮)・大山咋神(東本宮)・田心姫神・玉依姫神(樹下宮)
速雨神社阿波国勝浦郡小豊玉姫命
和多都美豊玉比売神社阿波国名方郡小豊玉姫命
天石門別豊玉比売神社阿波国名方郡小豊玉姫
横田神社阿波国美馬郡小玉依姫命
宇奈為神社阿波国那賀郡小豊玉彦命・豊玉姫命・玉依姫命

関連リンク

📚 参照資料(ブログ・Web本文マッチ)

  • 勾玉から考察① (本文中 “ワタツミ” ×9)

留保(中立的併記)

注意

  • 「海神族」は綿津見系の神格群を束ねる本ノート独自の整理概念で、記紀に同名の総称があるわけではない。
  • 海神宮を阿波の海岸線(鳴門〜那賀河口)に比定すること、皇統母系五代が阿波で展開したとすることは阿波説的解釈である。
  • 海神族(神格)と海人族(人間集団)の区別は本ノートの整理であり、史料用語の厳密な区分ではない。
  • 本ノートの evidence_type は “blog_hypothesis”、confidence は 2。