都我利神社(つがりじんじゃ)

要旨

都我利神社(島根県出雲市東林木町) は、阿遲志貴高彦根命(=味耜高彦根命、大国主の御子)を祀る式内社。『出雲国風土記』に「伊農社」、『延喜式』に「都我利神社」と記される古社で、社伝では白雉三年(652)の勧請。社号「都我利(つがり)」は、天稚彦の喪屋を斬り破った剣の名「我理(がり)」 に由来すると伝える――味耜高彦根命が、容姿の似た天稚彦の葬儀で死者と間違われて怒り、剣で喪屋を破壊したという『記紀』神話(剣神・雷神的性格)を社号に刻む稀少例。阿波説では、本社を 味耜高彦根命(鴨氏祖神)の出雲祭祀の一拠点 とし、阿須伎神社 とともに出雲側の鴨族祭祀を構成、阿波の鴨族祭祀(丹田古墳(加茂山):阿遅鋤高日子根神の神陵と巨石文化)と結ぶ。


1. 命題の構造

観点通説阿波説
祭神阿遲志貴高彦根命(大国主第八御子、出雲の在地神)味耜高彦根命=鴨氏祖神。出雲・阿波を結ぶ鴨族祭祀
社号「都我利」喪屋を斬った剣「我理」に由来味耜高彦根の剣神・雷神的性格を社号に保存
出雲祭祀出雲郡の在地古社鴨族祭祀の出雲拠点(阿須伎神社と並ぶ)

2. 基本情報

項目内容
社名都我利神社(つがりじんじゃ)
所在地島根県出雲市東林木町
創建白雉三年(652、社伝)
主祭神阿遲志貴高彦根命(=味耜高彦根命、大国主第八御子)
延喜式表記出雲国 出雲郡 都我利神社
風土記表記伊農社
社格小

3. 祭神と社伝

主祭神 阿遲志貴高彦根命=味耜高彦根命。『古事記』では大国主命の御子(当社伝では第八の御子)。

社号「都我利」の由来――剣「我理」

阿遅志貴高彦根命に容姿の似た神・天稚彦命の死に際し、(味耜高彦根が)天稚彦命に間違えられて怒り、この剣を抜いて喪屋を破壊した。その剣の名を「我理(がり)」といい、「都我利」の社号となった。

→ 『日本書紀』神代下・第九段の「天稚彦の弔い」神話(味耜高彦根が瓜二つの天稚彦と間違われ、怒って喪屋を切り倒す)に由来。味耜高彦根命の剣神・雷神的性格 が社号に保存された稀少例。


4. 歴史

  • 白雉三年(652、社伝):勧請
  • 古代:『出雲国風土記』に「伊農社」、『延喜式神名帳』に出雲国出雲郡「都我利神社」
  • 出雲郡の式内古社として現在に至る

5. 阿波説における意義

5-1. 味耜高彦根の出雲祭祀

阿須伎神社(阿受伎社39社の集中)とともに、本社は 味耜高彦根命の出雲祭祀の一拠点。出雲における鴨族祖神祭祀の厚みを示す。

5-2. 剣神・雷神としての味耜高彦根

社号「都我利=我理(剣)」は、味耜高彦根命の 剣神・雷神的性格 を伝える。鴨族祖神の多面的神格(農耕神=鋤/剣神=我理)を示し、阿波の鴨族神陵(丹田古墳(加茂山):阿遅鋤高日子根神の神陵と巨石文化)の祭祀とも響き合う。

5-3. 鴨族ネットワークの出雲側

味耜高彦根命を祀る全国社網(大和・伊豆・下野・陸奥)の出雲側を、阿須伎神社と本社が担う。


6. 関連神社・関連神格

味耜高彦根命の奉斎社

関連神格

阿波の本源

出雲の忌部・玉作

  • 玉作湯神社 — 松江市玉造、出雲玉作忌部祖 櫛明玉命を祀る(出雲の阿波接続群)

7. 現地情報

  • 住所:島根県出雲市東林木町
  • 例祭:都我利神社例祭

8. 参照ブログ・Web資料

Web資料

  • Shrine-heritager / 玄松子「都我利神社」
  • 出雲市「都我利神社」
  • 『出雲国風土記』(伊農社)

9. 史料

  • 『出雲国風土記』(出雲郡 伊農社)
  • 『延喜式』神名帳(出雲国出雲郡 都我利神社)
  • 『日本書紀』神代下・第九段(天稚彦の弔い、味耜高彦根の喪屋破壊)

10. 関連ノート(Vault内)


11. 留保(中立的併記)

注意

  • 祭神(阿遅志貴高彦根命)・社号由来(剣「我理」)は社伝・風土記・記紀に基づく。風土記「伊農社」と延喜式「都我利神社」の同定には議論の余地がある。
  • 「第八の御子」は社伝の数え方で、記紀の系譜とは表現が異なる。
  • 阿波接続は阿波説的解釈で、一次史料が阿波起源を明記しない。「鴨族ネットワークの出雲側」は仮説。
  • 本ノートの evidence_type は “primary_source_based”(祭神・風土記)/阿波接続は仮説、confidence は 3。

※本稿は味耜高彦根命(鴨氏祖神)の出雲祭祀の一拠点として、阿須伎神社とともに出雲側の鴨族祭祀を構成する。剣神的性格を社号に伝える点が特徴。