阿波の古墳:出土品・副葬品まとめ
徳島県(阿波国)の主要な古墳から出土した遺物は、阿波勢力が畿内(ヤマト王権)とどのような関係を築き、どのような資源(辰砂など)を活用していたかを示す極めて重要な証拠である。
ここでは「鏡の種類」「土器・埴輪の年代」「辰砂(朱)」の3つの視点から整理する。
🪞 鏡の種類とヤマト王権との繋がり
銅鏡はヤマト王権から有力な同盟者へ配布された「威信財」と考えられている。阿波の古墳からは、時代や首長の性格に応じた多様な鏡が出土している。
- 宮谷古墳(3世紀後半)
- 出土鏡: 三角縁神獣鏡 3面(前方部)、重圏文鏡 1面(後円部の木棺内)
- 意義: 徳島県内で唯一「三角縁神獣鏡」が出土した古墳。前方部にヤマト王権から授かった鏡を置き、後円部には別の鏡を納めるという特異な配置は、中央政権との強固な同盟を示している。
- 大代古墳(4世紀末)
- 出土鏡: 獣形鏡(破片2点)。※隣接する大代1号墳からは珠文鏡。
- 意義: 海上交通の要衝を支配した首長に対し、ヤマト王権から下賜されたものと考えられる。
- 西山谷2号墳(3世紀半ば)
- 出土鏡: 斜縁上方作銘獣帯鏡
- 丹田古墳(4世紀代)
- 出土鏡: 舶載獣形鏡(中国からの輸入品)
🏺 土器と埴輪の特徴・年代
祭祀に使われた土器や、墳丘を飾る埴輪は、古墳の築造年代や葬送儀礼の形態を特定する手がかりとなる。
- 西山谷2号墳(3世紀半ば)
- 土器: 直口壺、カメ
- 特徴: 意図的に土器を割って副葬する**「破砕副葬(はさいふくそう)」**の痕跡があり、古い時代の祭祀の形を残している。
- 渋野丸山古墳(5世紀前半)
- 土器: 小型丸底壺、高杯、笊(ざる)形土器などの土師器。造出(つくりだし)付近で祭祀に使われた。
- 埴輪: 円筒埴輪に加え、家形・盾形・甲冑形などの多様な形象埴輪。これらは大和の巨大古墳と共通の規格である。
🩸 辰砂(水銀朱)の戦略的活用
阿波は国内唯一の弥生時代の辰砂採掘遺跡(若杉山辰砂採掘遺跡)を擁し、この「赤色顔料」を独占的に供給することで巨大な権力を握ったとされる。
- 大代古墳(4世紀末)
- 石棺(刳抜式舟形石棺)の内外全面に、鮮やかな**水銀朱(辰砂)**が分厚く塗布されていた。地元の豊富な資源をふんだんに使用した例。
- 渋野丸山古墳(5世紀前半)
- 出土した円筒埴輪の一部に赤色塗彩(辰砂やベンガラ)が確認されており、墳丘を赤く彩る呪術的・権威的な装飾が施されていた。
- 阿波とヤマトの「朱と鏡の交易」
- 宮谷古墳から出土した「三角縁神獣鏡」は、阿波の勢力がヤマト王権に対して辰砂(朱)を供給した見返りとして授けられたとする説が有力である。阿波の「朱」は、初期ヤマト王権を経済的・宗教的に支える最重要資源であった。
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