三嶋大明神と阿波:伊豆一宮の元宮としての事代主祭祀

要旨

静岡県三島市の三嶋大社(伊豆国一宮、名神大社)は、主祭神を大山祇命と積羽八重事代主神の二柱(「三嶋大明神」と総称)とする。阿波説では、この三嶋大社(特に事代主祭祀)の本源を、阿波国に2社存在する事代主神社(阿波郡・勝浦郡)と、阿波忌部・海人族による伊豆諸島進出に求める。三嶋大社が元来は伊豆諸島(神津島・伊豆大島)に鎮座した点、伊古奈比咩命・阿波咩命という女神格の祭祀接続、阿波と伊豆の地名一致、事代主神=大宜都比売命の配偶神という阿波説、大山祇命の元宮論を整理し、阿波→伊豆の遷座ルートとして系譜的接続を示す。

📚 親ハブ: 元宮ハブ_MOC


1. 三嶋大社の概要

静岡県三島市に鎮座する 三嶋大社(みしまたいしゃ) は伊豆国一宮、名神大社。主祭神は 大山祇命 と 積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ) の二柱(合わせて「三嶋大明神」と総称)。

阿波説では、この三嶋大社(特に事代主祭祀)の本源を 阿波国に2社存在する事代主神社(阿波郡・勝浦郡)と、阿波忌部・海人族による伊豆諸島進出に求める。本ノートはその系譜的接続を整理する。

項目内容
鎮座地静岡県三島市大宮町
社格伊豆国一宮、名神大社、官幣大社
主祭神大山祇命、積羽八重事代主神(→ 三嶋大明神)
創建不詳(古代から)
由緒古くは伊豆諸島に鎮座、伊豆半島に遷座した経緯あり

2. 伊豆諸島と阿波の海洋ネットワーク

2-1. 三嶋大社の本源は伊豆諸島

通説でも三嶋大社は、もとは伊豆諸島(神津島・伊豆大島)に鎮座 し、後に伊豆半島の現在地に遷座したと考えられている。 神津島には現在も 物忌奈命神社(ものいみなのみことじんじゃ) が鎮座し、ここに 伊古奈比咩命(いこなひめのみこと) が祀られる。

2-2. 伊古奈比咩命と阿波咩命

伊豆諸島の祭神 伊古奈比咩命 と、阿波説で注目される 阿波咩命(あわめのみこと) は、いずれも伊豆諸島と阿波の祭祀接続を示す女神格である。

神鎮座地関連
伊古奈比咩命神津島・三嶋大社境内事代主神の妃神とも、独立した女神格とも
阿波咩命神津島・長浜神社、奈良率川阿波神社阿波由来の女神

→ noraneko-blog では、これらを 天日鷲命の血統の女神 として整理する。

→ 参考:

  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2023-08-21-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その壱 (出典)
  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2024-07-09-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その弐 (出典)
  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2024-09-23-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その参 (出典)

3. 事代主神の阿波本貫

延喜式神名帳では、事代主神社 という社名は阿波国に 2社 存在する:

神社郡比定論社
事代主神社阿波郡阿波市市場町伊月(事代主神社)
事代主神社勝浦郡生夷神社(勝浦郡勝浦町沼江田中71)

→ 1国に2社の事代主神社というのは全国でも極めて稀。これは事代主祭祀の 本貫地が阿波 であった証拠と解される。

→ 関連:事代主神社、生夷神社、勝占神社(勝占神社祭神=事代主神説)

→ 参考:awa_otoko_01_氏族_忌部#2016-10-04-勝占神社は事代主神社_祭神も事代主神_一柱だ!! (出典)


4. 地名の一致:阿波忌部の伊豆進出

awanonoraneko-blog が指摘する、伊豆と阿波の地名一致:

阿波の地名伊豆の地名関連
阿波(粟)阿波咩命(神津島・長浜)直接の地名複写
加茂(鴨族本拠)加茂郡(伊豆)鴨族の伊豆進出
那賀(南阿波の長国)那賀郡(伊豆)長国造の伊豆進出
伊浦・伊月(事代主神社)伊豆「伊」を冠する地名群

→ 参考:awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2009-02-06-地名の一致は阿波忌部進出の痕跡か?_③_伊豆國編 (出典)


5. 事代主神=大宜都比売命の配偶神という阿波説

阿波の式内社研究では、事代主神(積羽八重事代主神) を 大宜都比売命の配偶神 として位置づける論がある。

大宜都比売命(阿波国魂、上一宮大粟神社)
   ┃
   ┃(配偶)
   ┃
積羽八重事代主神(事代主神社×2)
   │
   ├ 海洋王権の象徴
   ├ 国譲りでの服属者
   └ 三嶋大明神として伊豆へ

→ 参考:積羽八重事代主神と阿波:大宜都比売命の配偶神としての海洋王権


6. 中臣氏との関係:天日鷲命系譜

三嶋大社祭祀には 中臣氏(後の藤原氏) の影響があるとされる。阿波説では、中臣氏も 天日鷲命の系譜 に連なるとする論が存在する。

→ 参考:awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2011-09-01-天日鷲命 は、中臣の神 1 (出典)

これが正しければ、三嶋大社の中臣系祭祀も、根本的には阿波忌部祖の祭祀 ということになる。


7. 大山祇命の元宮論との接続

三嶋大社の主祭神の一柱 大山祇命 は、伊予国一宮 大山祇神社(大三島) と同神。 元宮ハブ_MOC でも記載のとおり、大山祇神社の元宮は 阿讃山脈の「大山」 とされる。

→ つまり、三嶋大社の二柱(大山祇命+事代主神)は 両方とも阿波が元宮 という主張が成立する。

→ 参考:awanonoraneko_04_四国の風景#2007-08-23-大山祗神社 (出典)


8. 阿波→伊豆の遷座ルート

【弥生~古墳前期】
阿波(事代主神社、勝占神社、大宜都比売命祭祀)
   │
   │ 海洋ネットワーク(阿波忌部・海人族)
   │
   ▼
【古墳期】
伊豆諸島(神津島・伊古奈比咩命、阿波咩命)
   │
   │ さらに後の遷座
   │
   ▼
【飛鳥~奈良期】
伊豆半島(三嶋大社の現在地)→ 伊豆国一宮として中央祭祀化

9. 関連ノート(Vault内)


10. 参照原資料(ブログ・note記事)

  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2024-07-09-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その弐 (出典)
  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2023-08-21-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その壱 (出典)
  • awanonoraneko_01_不思議の徳島#2024-09-23-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その参 (出典)
  • awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2023-08-07-鳥の一族 19_-_⑦ 神津島_長浜神 阿波咩命 (出典)
  • awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2009-02-06-地名の一致は阿波忌部進出の痕跡か?_③_伊豆國編 (出典)
  • awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2012-05-07-鳥の一族 8 事代主命 (出典)
  • awanonoraneko_03_氏族_忌部海人#2011-09-01-天日鷲命 は、中臣の神 1 (出典)
  • awanonoraneko_04_四国の風景#2007-08-23-大山祗神社 (出典)
  • awa_otoko_02_氏族_粟国造_大宜都比売#2017-08-08-土佐国一宮ト阿波國一宮ハ夫妻之御神ナル可シ。 (出典)
  • awa_otoko_01_氏族_忌部#2016-10-04-勝占神社は事代主神社_祭神も事代主神_一柱だ!! (出典)
  • goutara_05_風土記古事記#2018-09-17-倭の神坐す地(8) (出典)
  • goutara_03_氏族_粟国造#2018-11-03-倭の神坐す地(9) (出典)
  • goutara_04_氏族_忌部#2019-08-25-倭の神坐す地(11) (出典)

11. 参照資料(ブログ・Web自動)

  • 2023-08-21-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その壱
  • 2024-07-09-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その弐
  • 2024-09-23-鳥の一族 19_-_⑧ 番外編 伊古奈比咩命 その参

12. 留保(中立的併記)

注意

  • 三嶋大社が元来は伊豆諸島に鎮座し伊豆半島へ遷座したこと、主祭神が大山祇命・積羽八重事代主神であることは通説・社伝による。一方、その本源を阿波の事代主祭祀・阿波忌部の伊豆進出に求める比定は阿波説固有の主張で、文献・考古で確定したものではない。
  • 阿波と伊豆の地名一致(阿波咩・加茂・那賀・伊)、伊古奈比咩命・阿波咩命の阿波由来説、中臣氏=天日鷲命系譜説、事代主神=大宜都比売命の配偶神説、大山祇命の元宮=阿讃山脈「大山」説は、いずれも awanonoraneko・awa-otoko・goutara 等のブログに依拠する阿波説的解釈であり、要検証である。
  • 本ノートの evidence_type は “primary_source_based”(事代主神社×2の式内社記載が骨格)、confidence は 3。