鴨神社

📚 讃岐 阿野郡 鴨神社 — 讃岐における賀茂氏祭祀の中核社。坂出市加茂町に東鴨神社・西鴨神社が分立し、両社が論社。京都・山城賀茂神社、阿波の賀茂祭祀との祭祀ネットワーク上の重要結節。

1. 命題の構造

観点通説阿波説
主祭神別雷神(上賀茂系)・事代主神(東鴨)。山城賀茂神社からの分祀阿波国名方郡(神山町神領)の賀茂氏本貫からの分派祭祀。山城賀茂神社・讃岐鴨神社は阿波賀茂氏の北方・北西分派
賀茂氏の本貫山城国愛宕郡・大和国葛城(葛城鴨/葛城賀茂氏)阿波国名方郡(神山町神領)。山城・葛城賀茂はいずれも阿波からの分派
創祀の経緯古代讃岐への賀茂氏の移住と祖神祭祀阿波賀茂氏の讃岐進出ルート上の祭祀拠点設置
別雷神/事代主神の併祀上下賀茂神社の祭神構造の踏襲阿波の事代主神社・多祁御奈刀祢神社・上一宮大粟神社周辺賀茂祭祀との同根性
東鴨・西鴨の分立中世以降の社地分割・別当寺関与による論社並立元来一社であった鴨神社が中世に分立、両社で祭神を分担

基本情報

  • 延喜式記載: 讃岐国 阿野郡 鴨神社
  • 読み: カモノ
  • 社格: 小
  • 比定社・論社: 東鴨神社/西鴨神社(坂出市加茂町に分立)
  • 所在地: 香川県坂出市加茂町
  • 郵便番号: 762-0023
  • 主祭神: 別雷神(わけいかづちのかみ)/事代主神

祭神と社伝

  • 主祭神は別雷神(上賀茂系)と伝える。東鴨は事代主神、西鴨は別雷神を主神とするなど、両社で祭神構成が異なる。
  • 鎮座地・坂出市加茂町は古代阿野郡の中心域で、賀茂氏(鴨氏)の讃岐分派が祭祀拠点を構えた地と見られる。
  • 京都・上下賀茂神社と祭祀的に直結する讃岐側の鴨族祭祀拠点。

歴史

  • 延喜式神名帳(927年)に「讃岐国阿野郡 鴨神社」として記載。讃岐国阿野郡3座(鴨神社・神谷神社・城山神社)の筆頭に列せられる。神名帳の郡内記載順では一般に格式・古さの順に並ぶ傾向があり、当社が阿野郡内で古層の祭祀拠点であった可能性を示す。
  • 中世以降、東西二社(東鴨神社・西鴨神社)の分立があり、論社の確定は議論が続く。
  • 近世は高松藩松平家の保護下にあった。
  • 鎮座地・坂出市加茂町は、讃岐国府跡(坂出市府中町)・城山神社の南西約3km、神谷神社の南西約4kmに位置し、阿野郡式内3座が讃岐中央の同一祭祀圏を形成する立地構造の一角を占める。

延喜式「座」原則との整合

  • 当社は『延喜式』神名帳に「鴨神社(一座)」と明記される。延喜式の「座」は祭神単位(feedback_engishiki_za)であり、古代延喜式段階の祭祀核心は単一神格(おそらく別雷神 あるいは 事代主神のいずれか一柱)に収斂していた可能性が高い。
  • 現在の東鴨・西鴨の二社分立と祭神分担(東鴨=事代主神、西鴨=別雷神)は、中世以降の社地分割と祭祀再編の結果で、延喜式段階の一座制とは齟齬する。古層祭祀の祭神比定は未確定。

阿波説における意義

  • 賀茂氏の阿波本貫説:阿波説では、賀茂氏は阿波国名方郡(神山町神領一帯)に本貫を持つ氏族とされる。山城の上下賀茂神社は阿波賀茂氏の北方分派、讃岐の鴨神社は同じく阿波賀茂氏の北西分派と理解される。
  • 苅田郡加麻良神社との対:讃岐西端の加麻良神社(賀茂系・苅田郡)と讃岐中央の鴨神社(讃岐)(阿野郡)は、讃岐における賀茂氏祭祀の東西二拠点を形成。阿波賀茂氏の讃岐進出ルート上の祭祀帯。
  • 事代主神と別雷神の併祀:両神は賀茂系祭祀の核心で、阿波の事代主神社・多祁御奈刀祢神社・上一宮大粟神社周辺の賀茂祭祀と同根。
  • 阿野郡3座の阿波接続軸:城山神社(讃岐国造祭祀・名神大)・神谷神社(火神・忌部系職能祭祀)と並ぶ阿野郡3座の一として、讃岐中央の阿波接続祭祀帯を構成する。阿波の王権(上一宮大粟神社)・忌部(忌部神社)・賀茂(事代主神社)の三系統祭祀構造を、阿野郡3座が讃岐中央に転写した形と整理される。

阿波の鴨神社(三好郡東みよし町加茂)との対照

  • 阿波国三好郡(現・東みよし町加茂)にも式内「鴨神社」が鎮座する(同名社)。阿波の鴨神社は田寸神社・横田神社とともに東みよし町加茂に集積し、阿波西部の賀茂系祭祀拠点を形成する。
  • 阿波と讃岐に同名の式内「鴨神社」が存在する事実は、賀茂氏祭祀が阿波・讃岐両国にわたって展開していたことを示す。地理的に阿波三好郡(吉野川中流・北岸)から讃岐阿野郡(坂出平野)へは、讃岐山脈を北越する阿讃国境ルート(猪ノ鼻峠/曼陀峠経由)で接続される。
  • 阿波説では、阿波三好郡の鴨神社が阿波賀茂氏の本貫祭祀(名方郡神山町神領)から讃岐山脈北麓へ展開する中継拠点、讃岐阿野郡の鴨神社が更にその北方・讃岐中央への進出拠点として整理される。

賀茂氏祭祀の三層構造

阿波説では、賀茂氏の祭祀分布を以下の三層構造として整理する。

層位置中核社性格
本貫層阿波国名方郡(神山町神領一帯)事代主神社・多祁御奈刀祢神社・上一宮大粟神社賀茂氏の本貫祭祀。事代主神=阿波長国造系の祖神祭祀
分派層(四国内)阿波三好郡・讃岐阿野郡・讃岐苅田郡・土佐阿波鴨神社(東みよし町)・讃岐鴨神社(坂出市)・加麻良神社(観音寺市)・賀茂神社(土佐)阿波本貫からの四国内分派祭祀
遠隔分派層山城・大和葛城上賀茂神社・下鴨神社・葛城鴨都波神社・葛城高鴨神社阿波賀茂氏の畿内進出後の祭祀

讃岐鴨神社は中間層(四国内分派)の核として、本貫層と遠隔分派層を媒介する祭祀ネットワーク上の結節点に立つ。

讃岐における賀茂祭祀の東西配置

讃岐国内には2社の賀茂系祭祀が式内社として確認される。

社名旧郡現所在主祭神性格
鴨神社(讃岐)阿野郡坂出市加茂町別雷神/事代主神讃岐中央(国府近接)の賀茂祭祀拠点
加麻良神社苅田郡観音寺市流岡町事代主神讃岐西端の賀茂系祭祀拠点

讃岐東部(大内郡・寒川郡)には賀茂系式内社が確認されず、賀茂氏祭祀は讃岐中央〜西部に集中する。阿波からの進出ルート(阿讃国境越え+瀬戸内沿岸西進)と整合する分布構造。

主要史料

  • 『延喜式』巻九・神名帳 上(927年):讃岐国阿野郡「鴨神社」一座と明記
  • 『延喜式』巻九・神名帳:阿波国三好郡「鴨神社」(同名・別社)の存在を確認
  • 『讃岐国名勝図会』(江戸後期):当社の近世社伝・東西二社分立の経緯を伝える
  • 『新撰姓氏録』:賀茂氏(鴨氏)の系譜・諸国分派を整理する史料

関連神社・関連氏族

  • 阿波元宮系:事代主神社(阿波名方郡)、多祁御奈刀祢神社、神山町神領の賀茂関連伝承地
  • 同祭神系:京都・上賀茂神社/下鴨神社、大和・葛城の鴨都波神社、加麻良神社
  • 関連氏族:賀茂氏(鴨氏)、阿波忌部、阿野郡郡司家

現地情報

  • アクセス:JR予讃線「坂出」駅から車で約10分
  • 主要祭事:例祭(10月)

関連論考

関連リンク

研究ポータル

📚 讃岐 阿野郡 鴨神社 — 讃岐の鴨族祭祀。京都賀茂神社との祭祀ネットワーク。

この神社の祭神を共有する阿波国式内社

ℹ️ この一覧は Obsidian 上で動的に表示されます(公開サイトでは省略)。

📚 参照資料(ブログ・Web自動)

  • 2009-08-01-式内社 鴨神社 三好郡東みよし町
  • 2010-02-22-下加茂神社と鴨神社と加茂神社
  • 鴨神社

12. 留保

  • 東鴨・西鴨の論社比定:両社が併存する形で延喜式内「鴨神社」の祭祀継承を主張するが、いずれが古代の本社(あるいは唯一の式内社)であったかは未確定。中世段階での社地分割の経緯・別当寺関与など、文献的裏付けは限定的。両社の祭神構成(東鴨=事代主神、西鴨=別雷神)も近世社伝段階の整理である可能性が高い。
  • 賀茂氏の阿波本貫説:賀茂氏の阿波本貫説は阿波説固有の立場で、通説では山城(愛宕郡)・大和(葛城)を本貫とする。『新撰姓氏録』『古語拾遺』など中央史料は阿波本貫を明記せず、阿波本貫説は阿波の事代主神社・上一宮大粟神社など賀茂祭祀の本源性からの推論に基づく。
  • 主祭神比定の不確かさ:主祭神比定は近世社伝による。延喜式段階の「一座」原則と現在の二社分立・祭神分担は齟齬し、古代本来の祭神は別雷神・事代主神のいずれか一柱に収斂していた可能性が高い。
  • 阿波三好郡 鴨神社との接続:阿波三好郡(東みよし町加茂)の鴨神社と讃岐阿野郡 鴨神社を、同一氏族の祭祀展開として整理する読みは阿波説の構造論であり、両社の祭祀的継承関係を直接示す文書は確認されない。同名社の存在は、賀茂氏祭祀の四国内広域性を示すが、具体的な分派関係を立証するには更なる検討が必要。
  • 賀茂祭祀の三層構造:賀茂氏祭祀を「阿波本貫層/四国内分派層/遠隔分派層」の三層として整理する読みは阿波説の構造論で、通説では山城・葛城本貫からの諸国分派として整理される。本貫の位置自体が阿波説と通説で対立しており、三層構造の整合性も阿波本貫説の妥当性に依存する。
  • 記紀における事代主神・別雷神の系譜:『古事記』神武天皇段では事代主神が大物主神の御子神として登場し、神武皇后 媛蹈鞴五十鈴媛命の父神となる。一方、別雷神は記紀本文には現れず、『山城国風土記』逸文(賀茂伝承)に初出する。両神を賀茂系祭祀の核心として併祀する祭祀構造は、中央史料では中世以降の整理であり、古代延喜式段階の本来祭神比定には慎重を要する。
  • wikilinkのフルパス表記:本ノートの一部に旧表記の [[式内社/06_讃岐国/01_郡別調査/阿野郡/鴨神社|鴨神社(讃岐)]] 形式のフルパス wikilink が残存する(自己参照)。Obsidian の wikilink 規約上は basename 表記が推奨だが(feedback_obsidian_wikilink)、既存記載を尊重し本加筆では改変しない。