大宜都比売命と天照大神:阿波における重層的な女神崇拝の構造

要旨

天照大神(大日孁尊)と大宜都比売命が、阿波の地でどのように同一視、あるいは継承されたかを考察する。大宜都比売命(あるいは阿波咩命)を伊勢遷座以前の阿波の「地の女神」かつ「太陽の女神」とみて、八倉比売神社の天照大神伝承と上一宮大粟神社の大宜都比売伝承を同一の祭祀女王の二側面と読む。『改正願稿』が指摘する「大粟姫(おおあわひめ)→大日孁(おおひるめ)」の音韻置換を、大宜都比売から天照大神への意図的な神名すり替えの論拠とし、阿波→大和→伊勢の祭祀継承プロセスを推測する。卑弥呼=大宜都比売命という等式に接続する阿波説の中心命題の一つである。

1. 理論的背景

  • 原初の太陽神: 大宜都比売命(あるいは阿波咩命)は、伊勢へ遷座する以前の、阿波における「地の女神」かつ「太陽の女神」であった可能性が高い。
  • 卑弥呼との繋がり: 八倉比売神社の天照大神伝承と、上一宮大粟神社の大宜都比売伝承の相似性は、同一の「祭祀女王」の異なる側面を表しているとされる。
  • 音韻置換: 「大粟姫(おおあわひめ)」が「大日孁(おおひるめ)」に置換されたという『改正願稿』の指摘は、大宜都比売から天照大神への神名移行が 意図的なすり替え であったとする論拠となる。

2. 阿波説における位置づけ

  1. 同一神論の核心:大宜都比売命と天照大神を 同一の祭祀女王の二側面 として読むことは、阿波説における「原初の太陽神=阿波の女神」仮説の中心命題。
  2. 伊勢神宮の元宮論との接続:天照大神が阿波の女神を起源とするなら、伊勢神宮内宮は 阿波の祭祀の遷座先 ということになる。これは元宮論全体の理論的核を構成する。
  3. 卑弥呼/壹與との重ね合わせ:天照大神=卑弥呼説(阿波説では強く支持される)と大宜都比売命=天照大神説を組み合わせれば、卑弥呼=大宜都比売命 という根本的等式が成立する。
  4. 音韻置換の証拠性:「大粟姫→大日孁」の置換は、神名のすり替えが祭祀権の移動を伴った可能性を示し、阿波→大和→伊勢の祭祀継承プロセスを推測する手がかりとなる。

3. 留保

注意

  • 大宜都比売命と天照大神を「同一の祭祀女王の二側面」とする同一神論は阿波説固有の解釈であり、記紀・通説では両神は別個の神格である。
  • 「大粟姫→大日孁」の音韻置換を意図的なすり替えとみる読みは『改正願稿』の指摘に依拠する仮説で、神名の音通から祭祀権移動を導くものであり、一次史料が明記する事実ではない。
  • 「卑弥呼=天照大神=大宜都比売命」の連鎖等式は他の阿波説論考(卑弥呼論・元宮論)と連動して初めて成立する前提で、本ノート単独で証明されるものではない。
  • 本ノートの evidence_type は blog_hypothesis、confidence は 2。

4. 関連ノート

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