伊弉冉大神

要旨

伊弉冉大神(いざなみのおおかみ) は、伊弉諾大神と共に大八洲を生んだ国生みの母神にして、火神を産んで死に至る死と再生(黄泉津大神)の女神。阿波説では国生み神話の本舞台を阿波(淡路・阿波・讃岐の瀬戸内ライン)に求め、淤能碁呂島を沼島または鳴門の渦潮中心に比定し、「淡(あわ)」の地名群を国生み神話の記憶痕跡とみる。伊弉冉の葬地・祭祀痕跡を剣山系の女神祭祀地に求める論考もある。

概要

  • 読み: イザナミノオオカミ
  • 別名: 伊邪那美命(古事記)/伊弉冉尊(日本書紀)/黄泉津大神/道敷大神
  • 配偶神: 伊弉諾大神(イザナギ)
  • 子: 大八洲(国生み)/天照大神・月読命・素戔嗚尊(三貴子の母/紀の異伝では諾神単独)/火之迦具土神 ほか
  • 登場文献: 『古事記』『日本書紀』『先代旧事本紀』

阿波説における位置づけ

阿波説では、伊弉諾・伊弉冉二神による 国生み神話の本舞台を阿波(淡路・阿波・讃岐の瀬戸内海ライン) に求める。記紀の「淤能碁呂島」を 沼島(淡路島南方) または 鳴門の渦潮の中心 に比定し、淡道之穂之狭別嶋(淡路)→ 伊予之二名嶋(四国) の生成順を、阿波を起点とする神話的地理として読み解く。

阿波説の核心:

国生み神話の島阿波説の比定
淤能碁呂島沼島/鳴門中心
淡道之穂之狭別嶋淡路島(阿波路)
伊予之二名嶋四国(阿波・讃岐・伊予・土佐の四面)
隠岐之三子嶋阿波周辺の小島群
筑紫嶋九州

→ 「淡(あわ)」の地名群(淡路・阿波・淡島・粟)は伊弉冉国生み神話の 記憶痕跡 であり、「阿波=国生みの中心」 という地理的論理を支える。

伊弉冉の 死と黄泉国 の場面については:

  • 火之迦具土神を産んだ際の火傷で死亡
  • 葬地:『古事記』では「出雲国と伯伎国との堺・比婆之山」
  • 阿波説では、伊弉冉の祭祀地として 徳島県美馬市・剣山系の女神祭祀地 に痕跡を残すとする論考あり。

神格と性格

  • 国生みの母神:日本列島の生成の半身
  • 死と再生の女神:黄泉国の女主=道敷大神
  • 火と冥界の境界神:火神を産んで死に至る重層性

阿波の祀る神社

※ deities または aliases に「伊弉冉/伊邪那美」を含む式内社(旧国・旧郡順)。

神社旧国旧郡社格主祭神
伊射奈美神社阿波国美馬郡小伊弉冉大神
天椅立神社阿波国美馬郡小伊邪那岐命・伊邪那美命
熊野本宮大社紀伊国牟婁郡名神大・紀伊国一宮家都美御子大神・須佐之男命・伊邪那岐神・伊邪那美神・天照大御神
熊野那智大社紀伊国牟婁郡国史見在社・紀伊国一宮熊野夫須美大神・伊邪那美神・家都美御子大神・熊野速玉大神
多和神社讃岐国寒川郡小伊弉冉尊・速玉男命・事解男命
多賀大社近江国犬上郡式内小社・旧官幣大社・別表神社伊邪那岐命・伊邪那美命

関連リンク

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留保(中立的併記)

注意

  • 伊弉冉の国生み・神産み・黄泉国譚は記紀による。『古事記』は葬地を「出雲と伯伎の堺・比婆之山」とし、阿波の剣山系とはしていない。
  • 淤能碁呂島の沼島/鳴門比定、「淡=阿波」を国生み神話の記憶痕跡とする読み、剣山系の女神祭祀地を伊弉冉の祭祀痕跡とする論は、いずれも阿波説的解釈である。
  • 三貴子の母とするかは書紀の一書により異同があり(諾神単独生成の伝もある)。
  • 本ノートの evidence_type は “primary_source_based”(記紀)、confidence は 3。