大和神社(おおやまとじんじゃ)
基本情報
- 延喜式記載:大和国 城上郡「大和坐大国魂神社 三座(名神大・月次・相嘗・新嘗)」
- 読み:オオヤマトニマスオオクニタマノ
- 社格:式内社(名神大)、廿二社、旧官幣大社
- 比定社:大和神社(奈良県天理市新泉町306)
- 所在地:奈良県天理市新泉町
- 創建伝承:『日本書紀』崇神6年、宮中に同殿共床していた天照大神と倭大国魂神を分離し、倭大国魂神を渟名城入姫命に託して市磯邑(いちしのむら)に祀ったのを起源とする
祭神
- 主祭神:倭大国魂大神(やまとおおくにたまのおおかみ)
- 左相殿:八千戈大神(やちほこのおおかみ)=大国主神
- 右相殿:御年大神(みとしのおおかみ)
倭大国魂神は 大和国(倭国)そのものの国魂神 であり、天照大神(皇祖神)と並ぶ国土守護神として、崇神朝以前は宮中に同殿祀祀されていた。両神の威光が強すぎて共住できないとされ、別宮を立てて遷座させた経緯は『日本書紀』に明記される(崇神紀6年条)。
「倭」を冠する神社の特異性
延喜式神名帳全体を見渡しても、社名に「倭(やまと)」を直接冠する式内社 は極めて限られる。大和国の本社(大和神社)の他に、唯一の対照例として 阿波国美馬郡の倭大國玉神大國敷神社 が存在する。
これは偶然ではなく、阿波説の最重要根拠の一つとされる。詳細は倭大國玉神大國敷神社:全国唯一「倭」を冠する式内社を参照。
阿波説における位置づけ
元宮論:阿波の倭大國玉神大國敷神社が原点
阿波説では、大和神社(倭大国魂)の 本宮(元宮)は阿波美馬郡の倭大國玉神大國敷神社 であると主張する。論拠は次の通り:
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社名の独自性: 全国の式内社2,861社のうち、「倭(やまと)の大国魂・大国敷」を直接冠するのは大和国と阿波国の2社のみ。しかも阿波の社は「倭大國玉神+大國敷神」の二神を祀り、「倭」を冠する全国唯一の 二座社 である。これは阿波が「倭国」を称した古い祭祀痕跡と読める
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「大國敷(おおくにしき)」の意義: 「敷」は「磯城(しき)」に通じ、大国(おおくに)を磯城(しき)た神 すなわち「国土を統治の場として整えた神」を意味する。後の大和に「磯城」郡が成立する前段階として、阿波に「大国敷」が祀られていたとする
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崇神朝の遷座の方向性: 『日本書紀』崇神紀の遷座記事は「宮中から別宮へ」とされるが、阿波説はこれを 「阿波の本宮から大和の別宮への分祀」 と読み替える。崇神朝は実質的に阿波から大和への王権遷移期と位置づけられ、その際に倭大国魂の本宮も阿波に残存し、別宮が大和に置かれたと解する
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倭直氏(やまとのあたい)の出自: 大和神社の祭祀氏族・倭直氏は、その祖を 椎根津彦(しいねつひこ=珍彦) と称する。椎根津彦は神武東征時に海路を導いた海人で、阿波・淡路の海域を本拠としていた可能性が高い。倭直氏の本貫は阿波海部にあるとする
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美馬郡の地理的中心性: 阿波美馬郡は吉野川中流域の交通要衝で、忌部氏(阿波忌部氏伝承詳細)の本貫・三木家屋敷とも近接する。倭大國玉神大國敷神社の鎮座地は、阿波における祭祀権力の中心域に位置する
神功皇后と大和神社
大和神社は 神功皇后の三韓征伐時に守護神 となった伝承を持ち、皇后の船霊として倭大国魂が祀られた。神功皇后は阿波説では 阿波・淡路の海人系氏族 との深い関係が想定される人物であり、海路の守護神=倭大国魂が阿波海部の祭祀神であったことと整合する。
戦艦「大和」の艦内神社
太平洋戦争中、戦艦「大和」の艦内神社として勧請されたのも大和神社である。これは近代の事象だが、「国土の魂・倭大国魂」が国家守護の最高位神として認識され続けた事実を示す。
関連神社
- 倭大國玉神大國敷神社(阿波美馬郡):阿波説における 元宮。倭大國玉神大國敷神社:全国唯一「倭」を冠する式内社
- 増御子神社:大和神社境内摂社。猿田彦神を祀る
- 朝日神社:大和神社摂社。天照大神を祀る
- 大神神社:城上郡のもう一つの名神大社。大神神社(おおみわじんじゃ)
関連氏族
- 倭直氏(やまとのあたい):椎根津彦を祖とする。大和神社の祭祀氏族
- 海部氏(あまべ):阿波海部・淡路海部の系譜と接続
- 市磯氏(いちし):神社近隣の在地豪族
留保
- 「倭」を冠する社が大和と阿波の2例のみという事実は確認できるが、それを「阿波が大和の元宮」とする結論は阿波説固有の解釈であり、通説は両社を独立した在地祭祀と見る
- 倭直氏の祖・椎根津彦の出自を阿波とする説は、神武東征伝承の阿波経由説(阿波・畿内地名ペア検証:東遷(ひがしうつり)の法則)と連動する仮説であり、文献的に確定するものではない
- 大和神社の現在地(天理市新泉町)は 崇神朝の市磯邑 の比定地だが、当初の鎮座地については別所説(笠縫邑近隣、巻向地域等)も存在する
現地情報
- 主要祭事:ちゃんちゃん祭(4月1日、大和の春の風物詩)、御田植祭(4月1日)、新嘗祭(11月23日)
- アクセス:JR桜井線「長柄」駅徒歩7分
- 特徴:戦艦「大和」ゆかりの神社として参拝者が多い
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