大宜都比売命と古代産業独占:麻・絹・五穀による経済基盤

要旨

「食物の神」という称号を、古代における高度な生産技術と資源流通の独占権の表現として読み直す論考。大宜都比売命を祖神的に崇める阿波忌部氏が、麻(あらたえ)・絹・穀物の生産拠点を阿波に確立したとし、『魏志倭人伝』の「其地多緜」「其山有丹」を阿波の特産と照合する。須佐之男命に殺されて五穀を生じる神話を、阿波における穀物生産独占権の起源譚として脱神話化し、大嘗祭の麁服調進や東阿波型土器の畿内分布と接続させて、大宜都比売命を古代の経済覇権を象徴する女神として再構成する。


1. 本論

「食物の神」という称号は、古代における高度な生産技術と資源流通の独占権を意味している。

1-1. 産業の各論

  • 阿波忌部との連携: 大宜都比売命を祖神的な存在として崇める阿波忌部氏が、麻(あらたえ)、絹、穀物の生産拠点を阿波に確立。
  • 魏志倭人伝との照合: 倭人伝に記された「其地多緜(綿・絹)」や「其山有丹(朱)」の記述は、阿波の特産品(大宜都比売の恵み)と完全に一致する。
  • 五穀起源神話の物的読み:須佐之男命に殺されて五穀を生じる神話は、抽象的な「食物の起源」ではなく、阿波における穀物生産の独占権の起源譚 として読み直される。

2. 阿波説における位置づけ

  1. 「食物の神」の脱神話化:大宜都比売命を 古代の経済覇権を象徴する女神 として再構成することで、神話を産業史・経済史の文脈に接続する。
  2. 天皇祭祀との接続:大嘗祭の 麁服(あらたえ) が阿波忌部によって調進されることは、阿波の麻生産が古代より天皇祭祀の不可欠要素であった証左。これは大宜都比売命の産業権威が 国家祭祀レベル に組み込まれていたことを示す。
  3. 東阿波型土器との連動:阿波の産業基盤が畿内へ移植される過程は、東阿波型土器の畿内分布(大宜都比売の民の東進:東阿波型土器と結晶片岩の考古学的証拠)と物的に対応する。

3. 関連ノート(Vault内)

関連リンク


4. 留保(中立的併記)

注意

  • 「食物の神」を経済覇権・産業独占権の表現とみる脱神話化、五穀起源神話を阿波の穀物生産独占権の起源譚とする読み替えは、いずれも阿波説的解釈であり、神話本文に明記された主張ではない。
  • 『魏志倭人伝』の「其地多緜」「其山有丹」を阿波の特産と「完全に一致」とする照合は、阿波説の比定であって、倭人伝の対象地を阿波と確定するものではない(邪馬台国の所在は通説では諸説ある)。
  • 本ノートの evidence_type は blog_hypothesis、confidence は 2。