大賣神社(おおひるめじんじゃ)

要旨

大賣神社(兵庫県丹波篠山市寺内字昼目谷) は丹波国多紀郡の式内小社。社名「おおひるめ」は 大日孁命(おおひるめ=天照大神) に由来し、鎮座地「昼目谷(ひるめだに)」も同じ神名に因む。現在の主祭神は 大宮売命(おおみやのめ)(玉祖命の御子、天照大神に仕える食物・宮中守護の女神)だが、社伝では 垂仁朝に皇女が天磐船(あめのいわふね)で当地に来て榊を植え神籬を立て、大日孁命(天照大神)を祀った のが創建とされる。阿波説の観点では、天磐船による降臨譚(饒速日・天孫降臨論)と 大日孁命=天照大神祭祀(阿波の天照祭祀=天石門別八倉比売神社系の女神論)への接点が注目されるが、社名の女神と阿波の関連は地名・神名に基づく仮説的接続にとどまる。


1. 命題の構造

観点通説阿波説(仮説)
社名「大賣=おおひるめ」大日孁命(天照大神)に由来、地名「昼目谷」も同根大日孁=天照祭祀。阿波の天照(八倉比売)女神論との接点
現主祭神・大宮売命食物・宮中守護の女神(玉祖命の御子)食物女神という性格が阿波の穀物女神祭祀と響く(弱い接続)
創建譚「天磐船で皇女が降臨」在地の降臨伝承天磐船=阿波説の饒速日・天孫降臨論との接点

2. 基本情報

項目内容
社名大賣神社(おおひるめじんじゃ/おおめじんじゃ)
所在地兵庫県丹波篠山市寺内字昼目谷
創建社伝:垂仁朝に大日孁命祭祀、桓武朝(800前後)に社殿造営
主祭神大宮売命(社伝の原初は大日孁命=天照大神)
配祀素戔嗚尊・応神天皇ほか
延喜式表記丹波国 多紀郡 大売神社
社格小
例祭10月11日(神輿渡御)

3. 祭神と社伝

現在の主祭神は 大宮売命(おおみやのめ)。玉祖命(たまのおやのみこと)の御子で、天照大神に仕え、君臣の関係を和らげる宮中守護の女神にして 食物の女神 とされる。配祀に素戔嗚尊・応神天皇ほか。

創建譚(天磐船と大日孁命)

第11代垂仁天皇の時代、皇女が 天磐船(あめのいわふね) で当地にやってきて、榊(さかき)を植え、注連縄を張り、木を曲げて神籬(ひもろぎ)を立て、大日孁命(おおひるめ=天照大神)を祀った。第50代桓武天皇の時代(800前後)に社殿を造営した。

→ 旧地名「城北村寺内字昼目谷(ひるめだに)」は 大日孁命(おおひるめ) の名に因む。社名「大賣=おおひるめ」も同根で、本来は 天照大神(大日孁)祭祀 の社であったことを示す。後に大宮売命との重層が生じた。


4. 歴史

  • 垂仁朝(社伝):皇女が天磐船で来て大日孁命を祀る
  • 桓武朝(800前後):社殿造営
  • 古代:『延喜式神名帳』に丹波国多紀郡「大売神社」
  • 中世:御影荘11ヶ村の鎮守。上ノ口城主・波多野秀治が祈願所とし大般若経350巻を奉納
  • 近世以降:寺内の氏神

5. 阿波説における意義(仮説)

5-1. 大日孁命=天照大神祭祀

社名・地名が示す 大日孁命(おおひるめ=天照大神) 祭祀は、阿波説の 天照大神=阿波の女神(天石門別八倉比売神社=天照大神の終焉地説など)の文脈と接点を持つ。「ヒルメ(日孁)」の女神祭祀が各地に分布する一例。

5-2. 天磐船による降臨譚

創建譚の 「皇女が天磐船で降臨」 は、阿波説の 天磐船・饒速日降臨論(阿波の天孫降臨論)と構造的に接点を持つ。天磐船伝承の全国分布の一例として読める。

5-3. 食物女神としての性格(弱い接続)

主祭神・大宮売命の 食物女神 としての性格は、阿波の穀物女神 大宜都比売命(オオゲツヒメ)(五穀を生む国魂神)と機能的に類似する面があるが、神格としては別系統。当初「大宜都比売との関連」が想定されたが、祭神は大宮売命=天照系であり、大宜都比売とは直接繋がらない点に注意(§7留保参照)。


6. 関連神社・関連神格

天照・大日孁の接続

丹波・但馬の関連社

  • 籠神社 — 丹後一宮(天火明命・海部氏・元伊勢)
  • 粟鹿神社 — 但馬一宮(粟・日子坐王)

7. 現地情報

  • 住所:兵庫県丹波篠山市寺内字昼目谷
  • 地名:昼目谷(ひるめだに)=大日孁命に因む
  • 例祭:10月11日(神輿渡御)
  • 文化財:波多野秀治奉納の大般若経

8. 参照ブログ・Web資料

Web資料

  • 丹波篠山市「大賣神社」
  • 古代史探訪「大賣神社(おおひるめじんじゃ、篠山市)」
  • Wikipedia「大宮売神社」(同名・大宮売命の本社格)

9. 史料

  • 『延喜式』神名帳(丹波国多紀郡 大売神社)
  • 大賣神社社伝(垂仁朝・天磐船・大日孁命)

10. 関連ノート(Vault内)


11. 留保(中立的併記)

注意

  • 阿波接続は仮説・弱め。社名「大賣=おおひるめ」は大日孁命(天照大神)に由来し、社伝は阿波起源を明記しない。
  • 当初想定した「大宜都比売との関連」は成立しにくい。本社の祭神は大宮売命(天照系の宮中・食物女神)であり、大宜都比売(おおげつひめ)とは別神。音の類似(おおめ/おおげつ)に依拠した接続は慎重に扱うべき。
  • 「天磐船降臨譚」と阿波の天孫降臨論の接点は構造的比較で、直接の系譜関係ではない。
  • 創建譚(垂仁朝・天磐船)は社伝で、史実としての検証は別途必要。
  • 本ノートの evidence_type は “shrine_origin”、confidence は 2(阿波接続は弱い)。

※本稿は「おおひるめ=大日孁命(天照大神)」祭祀と天磐船降臨譚を介した阿波説的接点という観点から位置付けられるが、接続は仮説的で弱い。丹波・但馬の阿波接続社は籠神社・粟鹿神社を参照。